わたしがフィンランド本を出すまでのこと。-Finnish Nightmares 発売決定によせて-
フィンランドで3万部の大ベストセラーになった本を、2017年の春、日本で出版できることになりました。私はその翻訳を手がけています。
オリジナルのタイトルは、"Finnish Nightmares" 。
さきほどさらっと「3万部の大ベストセラー」と書きましたが、「え?それってすごいの?」と首をかしげた方もいるのでは・・・・・・。
いえいえ、すごいです。フィンランドは人口わずか約540万人の国ですから。日本の推定人口データ(2016年10月付け)を調べたら、兵庫県(約552万人)と北海道(約535万人)のあいだくらいでした。それだけの人数で、けなげにひとつの"国"をやっているんです。
いつかのフィンランド旅行にて
540万人のうち3万部・・・ということは人口の0.56%。つまり”200人に1冊のペースで行き渡る部数”と考えると、大ヒットです。もし人口1億2千万人だったら、67万部規模です。実際、この本は、2016年のフィンランドで売れた本ランキング、マンガ部門で第一位に輝きました。
もともとは、著者カロリーナ・コルホネンさんがネットに投稿したブログやFacebookから人気に火が付いて書籍化された本作。現在、Facebookページのフォロワーは17万3,000人以上にふくれあがっています。これもフィンランド人の人口が約540万人であることを考えると・・・(しつこい)。ただ本作は英語で書かれていることもあり、Facebookのフォロワーにはフィンランド国外の人もいます。「フィンランド人じゃないけどすごい共感」「これを読んで確信した。私はフィンランド人だ」といったコメントもちらほら。そして、私も、「フィンランドじゃないけど共感する・・・」という外国人ファンの一人でした。
<Finnish NigtmaresのFacebookページ(英語)>
さて、どんな内容なのか。
"Finnish Nightmares"は、典型的なフィンランド人「マッティ」が遭遇する、"Nightmare=悪夢"のようなシチュエーションの数々を綴った作品です。典型的なフィンランド人マッティは、シャイで、内向的で、平穏で静かなのが好き。ところが社会生活においてはしばしば、悪夢のような、ユウウツな状況に遭遇してしまいます。
例えば、ショッピングにて。
©Finnish Nightmares / Karoliina Korhonen オリジナル版"Finnish Nightmares"より
店員が話しかけてくる・・・・・・。
それから、
©Finnish Nightmares / Karoliina Korhonen オリジナル版"Finnish Nightmares"より
出かけたいけど、ドアの外に住民がいる・・・・・・。
といった調子。本作はいわば、フィンランド人の「哀しいときあるある」集です。
私もマンション住まいなので、この状況、すごくよく分かります。出かけようとしてロビーに住民を発見すると、「ああ、今日はツイてない・・・」とションボリしてしまいます。「朝の占いが最下位」、みたいなダメージです。あるいは、ドアの陰に隠れて、しばらく間をおいてから、出かけることもあります。(そんな時間の余裕がないときが多いので、たいてい、前者になりますが。)
このように、本作には日本人でも共感する場面がとても多いのですが、一方で、フィンランド特有の文化や習慣に絡む「あるある」話も多く紹介されています。なので、この本を読むと、今までとは違った角度から、北欧の国・フィンランドというものを知ることができます。あまりに共感しすぎて、「自分ってフィンランド人なのかも?」と思い始めてしまうかも。
20代のあるとき、偶然、北欧に出会い、それから何度も通い、驚き、憧れ、愛を深めてきた私にとって、この作品を翻訳して日本で出版できることはこの上ない喜びです。北欧の文化や人々に出会ったことで、それまで一つの型の中でがんじがらめになっていた私の心はときほぐされ、もっと自由に、もっと自分らしく、生きていく方法を知りました。
シャイなフィンランド人と同様、あまり感情がおもてに出ていないかもしれませんが、今、私の心の中では、色とりどりの巨大な花火がバンバン打ち上がっているような状況です。・・・・・・ほんとうです。
どうか、この作品が、多くの人の手に届き、長く大切にされますように。
翻訳にあたっては、私のフィンランドでの体験や、フィンランド人へのインタビュー、そのほか、本や映画などから得たすべての知見を総動員して、フィンランド人の気持ちを日本語にできるように努めました。
日本での発売は、2017年4月頃の予定です。それまだ少し時間がありますので、これからまた少しずつ、本の内容のことや制作の裏話や、そもそもなぜ私がこの本を翻訳することになったか・・・なども書けたら良いなと思います。まだ、本の日本語タイトルも、まだ仮のままですし。
どうぞよろしくお願い致します。
P.S. 日本の出版元の方丈社さんが公式Twitterを作ってくださいました。ときどき中の人としてつぶやくので、こちらもよろしくお願いします!本の話だけでなく、北欧全般のマメ知識もお届けしますよ。 @matti_tokyo
日本の北欧ファンのみなさん、聞こえますか・・・・・・これからこのアカウントでひっそりつぶやきを始めます・・・・・・フィンランドの魂をのせて・・・・・・大きな声は出しません・・・・・・フィンランドの湖面のように穏やかに・・・なにとぞ ※翻訳者のつぶやきには最後に「ホ」がつきます。ホ
— 『ちょっと不思議なフィンランド人(仮)』 (@matti_tokyo) 2017年2月15日