pic034_Fotor_1215054725_Fotor.png

Welcome!

Haruka Yanagisawa / ライター&翻訳業/ 北欧、キャリア、働き方、ジェンダー、コミュニケーションなど

クマを予約

クマを予約

ついに、クマを予約した。

3年越しの夢だった。フィンランドでクマ・ウォッチング。森に一晩泊まって、クマを見ようというのだ。

数日前。私はクマ・ウォッチングをやっているホテルのホームページをさまよっていた。これまで「いつか、見たい」と思いながらも、「またの機会に」と3回、夏を見送ってきた。そうして時は過ぎていった。そして今年。突然、フィンランドに行く用事ができた。仕事の休みも調整できた。私はいまおおむね健康で、家族も健康で、養わなきゃいけない人もいない。あとは自らの意志と瞬発力さえあれば、夢(妄想)を形にできる。そんな状況。

それなのに、それなのに。いざ、「今なら、実行にうつせる」という場所に立ちながら、どうにも、私はためらっていた。二の足、ふみまくり。

どうも、勢いが足りない。いざ、予約を入れるとなると、「ほんとうに、これ、楽しいのかな……」などと思ってしまう。決めきれない私は、主催のホテルに質問のメールを書いた。

こんにちは。

私はクマ・ウォッチング・ツアーに興味を持っているのですが、ただの旅行者です。プロの写真家ではありません。それでも楽しめるものなのでしょうか?

Haruka Yanagisawa

そうそう。ちょっと疑問がわいたのだ。もしかしてこれは、プロの自然写真家や動物写真家向けのプランなのではないか?と。実際、ホームページの説明には、「このプランでは〜〜で、〜〜〜することにより、クマの写真を撮ることができます」的なことが書いてある。ナショナル・ジオグラフィックに写真が載るような人たち向けのプランなのでは?

そしてまた、プロ仕様の、筒が長いカメラでなければ姿が確認できないような、遠い距離でクマを見るのではないだろうか?私は普通のデジカメ(ミラーレス一眼)1台でのぞむつもりだが、そんなので大丈夫なのか。そもそも、「ただ、森のクマを見てみたい」という理由の動物好き素人が参加して良いものなのか・・・。私は写真を撮ることより、ただ自分の眼で、見てみたい……。会いたい……それだけ。

1日経って、ホテルから返信があった。

ハロー、ハルカ。

クマ・ウォッチングは写真家でなくても大丈夫です。1人だと追加料金で○○ユーロ、空港からの送り迎えは……。予約しますか? 

マーケティング担当・タルレーナ

そうなんだ!写真家じゃなくても大丈夫なんだって!

……というわけで、ようやく観念して(?)、予約を入れた。

タルレーナ様

ありがとうございます。予約したいです。1名(女性)です。

Haruka

このクマ・ウォッチング・プランは、(詳しいことは私も知らないけれど)森の中の簡易な小屋with寝袋で一晩をあかし、小屋の小窓から外をのぞいて、クマを見るというもの。クマに気づかれないように、静かに……。

「森でクマが見たい」と3年前に思い立ったときは、ただただ、楽しそうなイメージしかなかった。しかしいざ、行くことを決めてしまうと、またしても、不安がおそってくる。

ツアー参加者が私ひとりの場合、もし、簡易な小屋で私の身に何かあった場合、どうするんだろう……。

ちょうどその日に重い生理痛でクマどころじゃなかったら、どうしよう……。

夜、寒そう……。

そして、怖い……。

ひとりで行動することは慣れっこだが、フィンランドの、ロシアに近い森の中、簡易な小屋でたったひとりで夜を明かすことについては、楽しみというより、「どうなっちゃうの?!」という気持ち。

ようやく「夢」が叶うというのに、前向きなんだか後ろ向きなんだかわからない。

でも。そこまでしてどうして行きたいのかと言われれば、「どうなっちゃうのかわからない」ことに惹かれているのだよね。

もし。もし、フィンランドのしんとした森の中で、野生のクマの姿を見たら、どんな気持ちになるんだろう?

それってどんな感覚なんだろう?

……それを知りたい。わからないことに、惹かれる。

「こんなにきれい」「こんなにすごい」と誰かから約束された景色を、ただ「確認」するためにどこかへなんて行きたくない。

どんな気持ちになるのかわからないから、私はクマに予約を入れたのだ。

「夢」見ていたことが現実になりかける時は、いつだってものすごい不安に襲われる。以前にライターの仕事で、憧れの人のインタビュー記事を書く仕事がめぐってきた時も、そうだった。喉から手が出るほど望んでいたのに、いざ、現実になると、不安がオバケのように襲いかかってきて、吐きそうになる。とんだ小心者。

で、そのたびに、必死でオバケを追い払うわけで……

だから、今回も……。

あーー!それにしても……。がおー。

2019年4月23日(火)

フィンランドのおじさんと「泣き相撲」

フィンランドのおじさんと「泣き相撲」