個人的な、本の裏話

実に多くの人の助けがあって、「マッティは今日も憂鬱-フィンランド人の不思議」という本を、4月27日に、無事、世の中に送り出すことができました。より多くの人に本を届けるという意味では、まだこれから長い旅が続きますが・・・。少なくとも本は完成して私の手を離れたわけで、あとは、マッティ、広い世界で自由に羽ばたいてね!という気持ちです。

週末には、大きなPOPを描いて下さったヴィレッジヴァンガードお茶の水店に実際に足を運んでみました。もちろん、あまり人のいない時間帯に、こっそりと・・・。

私はよく、本やドラマや映画のなかのキャラクターのなかに、仲良くなれそうな人・話があいそうな人を見つけると、嬉しくて、それこそ、孤独が癒やされるのを感じます。そういう瞬間のために本に手を伸ばすといっても過言ではありません。

ヴィレッジヴァンガードお茶の水店で、大きなマッティのイラストと、「めっちゃ仲良くなれる気がする」という書店員さんの言葉を見て、こうやって本を通じて、会ったことのない人同士が共感したり、つながったりすることができるんだよなあ、と改めて思いました。

愛情を持って本を並べて下さったお店の方々、Twitterやメールなどで感想を下さった方々、本当にどうもありがとうございます。

* * *

ところでちょっと個人的なお話。

今回の本は、”北欧・フィンランド”でベストセラーになった、シャイな”フィンランド人”を描いた本、ということでまずは売り出していますが。

私としては、実は以前から、北欧という切り口とは関係なく、ある大きな思いがありました。

それは、人のキャラクターや個性というものについて、
"こうあるべき" や、
"こちらの方が優れている"
という一元的な価値基準が、もし人々の無意識の中にあるとしたら、そこに一石を投じたいという気持ちです。


すなわち、
おしゃべりが上手で、社交上手で、愛想が良く、自己アピールも上手…といった性質は、しばしば学校や会社の中で、「良きもの」としてスポットライトをあびやすいですけれど、
その逆にあるものだって、ありのまま肯定したい。

いや、単なる肯定以上に、なんて愛すべきものなんだと、言いたい!!
…という気持ちが常々あって。


そこに、Finnish Nightmares という原作とめぐりあって(その当時はまだブログで、本国でも本にすらなっていなかった)、私の思いにすごくシンクロする!と思って、それからなんやかんやあったりなかったりした時を経て、出版者・方丈社の方々の多大なる尽力があって、翻訳出版が実現したのでした。

* * *


なんて裏話をなぜ書いたかというと、”北欧”には興味のない知人が本書を読んで、「これって〇〇という、あなたが大事にしている世界観の本だよね。そこに共感する」と、まさに私が意図していたことをコメントしてくれた人がいたから!
本について、本の外であれこれ書くのは野暮な気がしたのと、読者には自由に読んで欲しかったので、あまり個人的な思いについて説明するのは避けていたのですが、今さらながら、少しだけ説明してみました。笑

私は、北欧諸国の人々や文化について、並々ならぬ愛情を持っていますし、それについて研究することにも並々ならぬ情熱を持っていますが(恐らくこれはライフ・ワーク)、ただ、私にとって北欧は、より素敵な世界を実現するための、あくまでアプローチの1つ。だから今回の本も、入り口としては北欧に興味がある・ないに関係なく、読んでもらえるところまでいけたら・・・本望なのです。

* * *

不器用な人、口べたな人、人との距離感がうまくつかめない人、馴れ馴れしくできない人。あるいは、その逆の人。色々な人がいて、社会に出たら、色々な人とうまくやっていくために、ちょっとは無理したりしなければいけない場面もどうしてもあるわけです。

でも、必要があってそのときだけ無理するのと、自分の個性を根本から否定するのとは、全然違います。

学校や会社や人づきあいで、必要があってちょっと無理しているうちに、自分の自然な姿を見失って疲れてしまった人。

そんな人に、「マッティ」が届いたらいいなあーなんて、思います。

「こうあらねばならない」という、人が無意識のうちに自分に課している「かせ」をほんの少し、本を読んでいる時間のあいだだけでもいいから取り払ってくれたら。その人が自然のままの自分を肯定して、ほっとすることができたら・・・。

そんなときに、マッティが側にいてくれたら、いいな。

あとは、マッティに、任せた!たくさんの日本人読者と出会っておくれ〜✨️

吉祥寺パルコブックセンターにて

吉祥寺パルコブックセンターにて

マッティは今日も憂鬱
By カロリーナ・コルホネン

ぐいぐい行かない、アピール苦手。日本人とフィンランド人は似ているの?

今年4月27日に日本で発売予定の「Finnish Nightmares(原題)」。日本語タイトルが『マッティは今日も憂鬱ーフィンランド人の不思議』に決まり、本の制作作業は現在、最後の段階に差し掛かっています。

チェック中のゲラ。原書の英文を残しつつ、日本語をどこに置けば読みやすいか、デザイナーさんが色々と考えてくださっています。

チェック中のゲラ。原書の英文を残しつつ、日本語をどこに置けば読みやすいか、デザイナーさんが色々と考えてくださっています。

さて、主人公である「典型的なフィンランド人」マッティは、シャイで、はにかみ気味で、もの静かで、自己主張はちょっと苦手。そして、日々さまざまな、「憂鬱」に遭遇します。

典型的なフィンランド人について綴られた本作ですが、不思議なことに、日本人の方々から、「共感する!」という声がよく聞かれます。

◇あなたは共感する?「フィンランド人マッティの憂鬱」

実際、どのあたりが日本人と似ているのでしょうか。以下のシチュエーション、あなたは、共感しますか?しませんか?


■マッティの憂鬱--#1 「質問はあるけど、スポットライトは浴びたくない」

 ©Finnish Nightmares / Karoliina Korhonen(オリジナル版”Finnish Nightmares”より)

 ©Finnish Nightmares / Karoliina Korhonen(オリジナル版”Finnish Nightmares”より)


■マッティの憂鬱--#2  「自己アピールをしないといけない」

©Finnish Nightmares / Karoliina Korhonen(オリジナル版”Finnish Nightmares”より)

©Finnish Nightmares / Karoliina Korhonen(オリジナル版”Finnish Nightmares”より)


■マッティの憂鬱--#3  「褒められる」

©Finnish Nightmares / Karoliina Korhonen(オリジナル版”Finnish Nightmares”より)

©Finnish Nightmares / Karoliina Korhonen(オリジナル版”Finnish Nightmares”より)


いかがでしたか?

みんなの前でほめられて。「そうなんです!オレという人間はですね・・・」と得意げに語れる人も中にはいますけれども、それよりも、マッティのように、つい謙遜してしまう人、「○○さんのおかげです、自分は運がよかっただけです」などと小さな声で答える人、そもそも自分の手柄であっても口に出せないままシンとしている人・・・そんな人々のほうが、多いのではないでしょうか。

フィンランド人と日本人の共通点については、フィンランド大使館の方も、R25のインタビューの中で以下のように述べています。

「日本とフィンランドって共通点も多いと思いますよ。じつはフィンランド人ってシャイで、自己アピールが下手なんですよ。」

「ガツガツしたアピールに抵抗があるんですね。だから、どうしても『自虐』の方向に走る傾向が…(笑) でも、そんな自国民への理解がとってもユーモラスなんです」

--R25「フィンランド大使館Twitterの“自由すぎる”運用の裏側」より

 

◇フィンランド人も「俺って日本人と似てる・・・」と感じている。

一方、フィンランドのかたも日本人に対して、「似てる・・・」という印象を抱いています。2017年2月、ノーザンライツフェスティバルのために来日したフィンランド人映画監督、アンティ・ハーセさんは、日本に初めて来た感想を尋ねられ、「フィンランド人と日本人は共通点が多く、似ているように感じました」と答えていました。

 

◇日本人とフィンランド人が抱える共通の”悩み”

なぜ、日本人とフィンランド人は「似ている」と感じるのでしょうか。その答えを探す旅には長い時間がかかりそうな気がしていますが、今日は1つ、興味深い考察をご紹介します。

それは、フィンランドで50年以上暮らした経験を持つイギリス人の作家、リチャード・D・ルイスさんの言葉です。彼は著書「Finland, Cultural Lone Wolf」 のなかで、こんな言葉を記しています。

「フィンランド人のジレンマは、彼らが、西洋的価値観の持ち主でありながら、アジア的なコミュニケーションのベールをまとっていることだ」

このルイスさんの言葉をヒントに考えてみるなら、フィンランド人と日本人は、「おなじ種類のジレンマ」を共有しているのかもしれません。

アジア的なコミュニケーションと、西洋的価値観とのあいだで、揺れ動いているフィンランド人。

会社や学校でしばしば、「西洋的価値観で振るまうことを強いられる」、日本人。

つまりはアジア的スタイルと、西洋的価値観の狭間で揺れ動くときに生じる「なんとなく落ち着かない気持ち」が、フィンランド人と日本人が共有する「憂鬱」の、1つの正体なのかもしれません。

 

それはさておき、「マッティは今日も憂鬱」はただシンプルに、くすっと笑えて癒やされる、チャーミングな本です。「今日も憂鬱」といいつつ、読むとなぜか、憂鬱な気持ちが解きほぐされて、楽になるんです。シャイで不器用なご友人への贈り物にも最適ですよ。

I've heard that Finnish Nightmares book is often given as a souvenir. It might work as a Christmas gift too.

Finn Mattiさん(@finnishnightmaresofficial)がシェアした投稿 -

 

今日ご紹介したのとは反対に、この本を読んでいると、「日本人とフィンランド人って違うんだなあ〜」と感じる面もあるので、それについてはまた後日紹介できればと。

それでは、また。

P.S. Amazon予約ができるようになりました(こちら)&Twitterもやっています。

マッティは今日も憂鬱
By カロリーナ・コルホネン

※【お知らせ】全国書店で『マッティは今日も憂鬱』をお買い上げいただいた方には特典のプレゼントがあるそうです。詳細は追ってお知らせいたします。(ネット書店での配布はございませんことどうかご了承ください。)

わたしがフィンランド本を出すまでのこと。-Finnish Nightmares 発売決定によせて-

フィンランドで3万部の大ベストセラーになった本を、2017年の春、日本で出版できることになりました。私はその翻訳を手がけています。

オリジナルのタイトルは、"Finnish Nightmares" 。

FN_book_original

さきほどさらっと「3万部の大ベストセラー」と書きましたが、「え?それってすごいの?」と首をかしげた方もいるのでは・・・・・・。

 

いえいえ、すごいです。フィンランドは人口わずか約540万人の国ですから。日本の推定人口データ(2016年10月付け)を調べたら、兵庫県(約552万人)と北海道(約535万人)のあいだくらいでした。それだけの人数で、けなげにひとつの"国"をやっているんです。

いつかのフィンランド旅行にて

いつかのフィンランド旅行にて

540万人のうち3万部・・・ということは人口の0.56%。つまり”200人に1冊のペースで行き渡る部数”と考えると、大ヒットです。もし人口1億2千万人だったら、67万部規模です。実際、この本は、2016年のフィンランドで売れた本ランキング、マンガ部門で第一位に輝きました。

もともとは、著者カロリーナ・コルホネンさんがネットに投稿したブログやFacebookから人気に火が付いて書籍化された本作。現在、Facebookページのフォロワーは17万3,000人以上にふくれあがっています。これもフィンランド人の人口が約540万人であることを考えると・・・(しつこい)。ただ本作は英語で書かれていることもあり、Facebookのフォロワーにはフィンランド国外の人もいます。「フィンランド人じゃないけどすごい共感」「これを読んで確信した。私はフィンランド人だ」といったコメントもちらほら。そして、私も、「フィンランドじゃないけど共感する・・・」という外国人ファンの一人でした。

<Finnish NigtmaresのFacebookページ(英語)>

https://www.facebook.com/finnishnightmares/

 

さて、どんな内容なのか。

"Finnish Nightmares"は、典型的なフィンランド人「マッティ」が遭遇する、"Nightmare=悪夢"のようなシチュエーションの数々を綴った作品です。典型的なフィンランド人マッティは、シャイで、内向的で、平穏で静かなのが好き。ところが社会生活においてはしばしば、悪夢のような、ユウウツな状況に遭遇してしまいます。

 

例えば、ショッピングにて。

©Finnish Nightmares / Karoliina Korhonen オリジナル版"Finnish Nightmares"より

©Finnish Nightmares / Karoliina Korhonen オリジナル版"Finnish Nightmares"より

店員が話しかけてくる・・・・・・。

 

それから、

©Finnish Nightmares / Karoliina Korhonen オリジナル版"Finnish Nightmares"より

©Finnish Nightmares / Karoliina Korhonen オリジナル版"Finnish Nightmares"より

 出かけたいけど、ドアの外に住民がいる・・・・・・。

 

といった調子。本作はいわば、フィンランド人の「哀しいときあるある」集です。

私もマンション住まいなので、この状況、すごくよく分かります。出かけようとしてロビーに住民を発見すると、「ああ、今日はツイてない・・・」とションボリしてしまいます。「朝の占いが最下位」、みたいなダメージです。あるいは、ドアの陰に隠れて、しばらく間をおいてから、出かけることもあります。(そんな時間の余裕がないときが多いので、たいてい、前者になりますが。)

このように、本作には日本人でも共感する場面がとても多いのですが、一方で、フィンランド特有の文化や習慣に絡む「あるある」話も多く紹介されています。なので、この本を読むと、今までとは違った角度から、北欧の国・フィンランドというものを知ることができます。あまりに共感しすぎて、「自分ってフィンランド人なのかも?」と思い始めてしまうかも。

 

20代のあるとき、偶然、北欧に出会い、それから何度も通い、驚き、憧れ、愛を深めてきた私にとって、この作品を翻訳して日本で出版できることはこの上ない喜びです。北欧の文化や人々に出会ったことで、それまで一つの型の中でがんじがらめになっていた私の心はときほぐされ、もっと自由に、もっと自分らしく、生きていく方法を知りました。

シャイなフィンランド人と同様、あまり感情がおもてに出ていないかもしれませんが、今、私の心の中では、色とりどりの巨大な花火がバンバン打ち上がっているような状況です。・・・・・・ほんとうです。

どうか、この作品が、多くの人の手に届き、長く大切にされますように。

翻訳にあたっては、私のフィンランドでの体験や、フィンランド人へのインタビュー、そのほか、本や映画などから得たすべての知見を総動員して、フィンランド人の気持ちを日本語にできるように努めました。

日本での発売は、2017年4月頃の予定です。それまだ少し時間がありますので、これからまた少しずつ、本の内容のことや制作の裏話や、そもそもなぜ私がこの本を翻訳することになったか・・・なども書けたら良いなと思います。まだ、本の日本語タイトルも、まだ仮のままですし。

どうぞよろしくお願い致します。

P.S. 日本の出版元の方丈社さんが公式Twitterを作ってくださいました。ときどき中の人としてつぶやくので、こちらもよろしくお願いします!本の話だけでなく、北欧全般のマメ知識もお届けしますよ。 @matti_tokyo