夏がくれば必ず・・・「マッティのスマイル」を私は失ってしまったのだろうか

もの悲しいタイトルで始まってしまったけれど、こないだのイベント絡みの話。悲しい話ではありませぬ。

11月26日日曜日の夜、東京・谷中にある”ひるねこBOOKS”さんにて「マッティ、旅に出る。」の刊行記念トークイベントをやりました。このイベント、「マッティの第二弾が出ます」という発表をした当日か翌日くらいに、ひるねこBOOKS店長・小張さんから熱いメールを頂き実現したもの。そんな風に言ってくださる方がいるなんて・・・と、感激のあまり、モジモジしつつも喜んで「マッティとフィンランドにまつわるトーク」を90分ほど繰り広げることに致しました。

当日の雰囲気は、こんな感じ(↓写真)。前作「マッティは今日も憂鬱」の日本出版秘話についてなどお話しつつ、最新刊「マッティ、旅に出る。ーやっぱり今日も憂鬱」の中からは、数ページをピックアップして、その憂鬱の背景にあるフィンランドの気候、ライフスタイル、フィンランド人の楽しみにしていること・・・などについてお話しました。

気候に関して言えば、「フィンランドは寒さが厳しい、冬が長い」・・・そんなひと言じゃ生ぬるいぞ!ということで、フィンランドに移住した外国人による12ヶ月エッセイなどもご紹介しました。(「まあぁぁぁぁじいぃぃぃぃぃでえぇぇぇ、いつになったら暖かくなるの?!」とぶち切れ始める移住一年目のアメリカ人なのでありました・・・)

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そんな中で、「アイスをなめるマッティ」についても触れたのであります。今日はその話を書きたいと思います。

イベント時のひるねこBOOKSさんの棚。原書(左)は出版社さんがこのとき限定で持ってきてくれました。

イベント時のひるねこBOOKSさんの棚。原書(左)は出版社さんがこのとき限定で持ってきてくれました。

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ネタばれになるのであまり詳しく書きませんが、「マッティ、旅に出る。」の中には、前作同様、「憂鬱あるある」「憂鬱あるある」「憂鬱あるある」・・・という連続のなかに、ふと、「夏、アイスが大好きです」というマッティが出てきます(厳密にこういう翻訳ではないですが)。にんまりしているマッティ。これはちょっと、「おや?」と、なるんです。

憂鬱あるあるにうなずく読者の、ページをめくる手を一瞬止めるような1ページ。このページの意味は一体なんなのだろうと、翻訳作業中から気になっていました。

「アイスとフィンランド人の関係」については、本のあとがきでも解説を加えたので、ぜひそちらを見てください。それはそれとして、今回トークイベントをやるにあたって本書を読み返していて、ふと考えさせられたのは、「マッティが思わず笑顔になってしまう夏のアイス。私にとっては何だろう?」というクエスチョンです。

静けさが大事、パーソナルスペースが大事。そんなマッティには「うんうん、私も・・・」と全力で共感できたのだけれど、夏のアイスに対するそこまでの愛と情熱が私にはあるだろうか・・・と思うと、自信がない。(たしかに私もアイスは好きだけれども。)「マッティ、その心、すごいな」と思いました。

子どもの頃大好きだったもの、「昔はそれで大喜びだった」というもの。そういうのだったら、たくさんあります。

でも、成人であるところのマッティが、「夏といえば、アイス!大好き!」と笑顔になるように、私が絶対的に笑顔になれるものって何でしょうか。1年のうちでこれを楽しみにしているんだ!というようなものって・・・。

夏といえば、蚊取り線香、かき氷、金魚すくい、スイカなど・・・?どれも愛しく思い出すけれど、どことなく「懐かしさ」のフィルターがかかってしまっていて、「今も大好き、欠かせない」と鮮やかに言えるような気がしない。「大人になって、都会に住んだら、なんか・・・ほかにも楽しいことあるしね」みたいな感じ。「実家に帰ったら食べるけど、普段は、カットされたスイカを買って食べるくらいかな・・・」みたいな、なんとも心許ない回答です。昔の記憶と今の私との隔たりは、「子どもと大人」「田舎と都会」という両者のあいだの断絶を表しているかのようにも思えてきます。

そう考えると、マッティに象徴されるフィンランドの人は、文明が発達し、人々が森林部から都市へと移り住むようになり・・・という時代の変化を経てもなお、「素朴で身近な楽しみを忘れずにいる」、ということなのかもしれません。真冬に凍った湖に穴をあけて泳いだり、はしゃいだりしているフィンランド人の姿などを見ていても、「私が子ども時代に置き忘れてきてしまったものを、持っているのかも・・・?」と思わされることがあります。

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私の住む東京では今の時期、赤、黄、オレンジの葉っぱが街を明るく輝かせています。それはどんなイルミネーションよりも心を照らしてくれる存在で、寒さ、日の短さといった季節の厳しさとコントラストをなしている。12月の街って可愛い。

そして落ち葉の上を歩きながら、「そういえば、子どもの頃、落ち葉で焼き芋、焼いたなー」と思い出しました。

そうだ!子どもの頃。落ち葉を集めて焼き芋焼いたし、栗を拾いに行ったし、銀杏も拾いに行ったさ。春にはタケノコ掘ったし、つくし集めたし、ツツジの花の蜜だって吸ったさ。思い出してきた・・・!あるある!

私のなかで「懐かしBOX」へと収納されてしまっていたもの、実はたくさん、ある。小さくて素朴で、身近なんだけれど、とてもカラフルな、ものたちばかり。

この中から、どれか1つでも今の私に引き寄せてみたら、マッティみたいに(照れながらも)スマイルになれるかな?

マッティにとってのアイスのように、「今も昔も、大人になってもずっと好き」っていうもの、私にもきっとあるはず・・・。

(あって欲しい)

そんなことを考えたのでした。(あ、イベント絡みでもう1つ書きたいことがあったのだけど、書き切れなかった!)

 

銀杏が好き!!秋が好き!

銀杏が好き!!秋が好き!


■メモ:ひるねこBOOKS

北欧関連書籍や雑貨もある谷根千のアットホームな本屋さん。北欧国旗を目印にどうぞ!店長・小張さんはエプロンに北欧諸国(?)の缶バッチをたくさんつけているよ。ムーミンが好き&北欧のなかではノルウェーびいきだというけれど・・・。お店のツイッター:https://twitter.com/hirunekobooks

店舗所在地 〒110-0001 東京都台東区谷中2-1-14(地下鉄千代田線 根津駅より徒歩約6分)

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「マッティ、旅に出る。」について旅先で考えた話。

フィンランドの本「Finnish Nightmares」を日本で出版したのが2017年4月末。

『マッティは今日も憂鬱 -フィンランド人の不思議』というタイトルで発売した日本語版は、当初「絵本なの?マンガなの?」「海外文学なの?コミックエッセイなの?」という若干の戸惑いをもたれながらも、徐々に日本のなかに居場所を見つけてくれた・・・。そんな気がした。マッティが「てるてる坊主みたい」とか、「栗まんじゅうみたい」とか、色々言われてました。(私は「水泳帽を被っている人」をなぜか思い出すのですが・・・)

パルコブックセンター吉祥寺店

パルコブックセンター吉祥寺店

しかし、そうはいっても、まさか第2弾が出ることになるなんて!

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写真は今年(2017年)初秋のフィンランドにて。原書を抱えて、ひとけのない森にこもっていました。

・・・なんて書くと、ホテルで缶詰になって執筆する大物作家みたいですが(森にこもって執筆だなんて素敵すぎる)、もちろん、そういうのでは、ありません。ただ、私は、ある日、静かな決意と流れに身を任せ、ひとり、フィンランドへ行き、それは北部ラップランド地方の人里離れた場所で、マッティ本を小脇に抱えて、森を歩いていただけです。途中で、野生のトナカイに遭遇したり、ものすごい勢いで蚊(及びさらに強靱な昆虫)に刺されたり、おびただしい数のキノコを激写したりしていました。農場の牛にじっっと集団で見つめられたときは、一瞬「今、牛に襲われたらどうしよう誰も助けてくれない」という悪夢が脳裏をよぎりましたが・・・。(牛は黙ってタダ見つめるだけで、何もしないしモーとも言わなかった。)

それもこれも、Finnishness(フィニッシュネス:フィンランド(人)らしさ)をじかに感じるため・・・

 

マッティは静けさが好き。

ほかにも、好きなもの、じつは、たくさん、ある。

 

フィンランドの森はどこまでも静かで、私を排除するでも歓迎するでもなく、ただやさしく、そこに、ありました。白樺の幹は降りたての雪のように白く、光が差すときらきらと輝いて見える。

「いたければ、いつまででも、いればいいんだよ」と、森の静寂は私に言ってくれているようでした。

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成田を発ってから機内モードで「ただの静かなカメラ機」と化した私のiPhone。しかし日本にいる方丈社(マッティの出版社)の方たちが、「現地写真(できればwithマッティ)を送って〜」とのことだったので、ある晩、一瞬だけコテージのwifiにつないで、一瞬のうちにメールを送りました。そして、即、機内モードへ。。

静寂が静寂すぎて、コテージの壁時計が放つ秒針の音が、いちいち心臓に響いた・・・。

ピントが森のほうにあってしまってゴメンマッティ・・・ in Finland

ピントが森のほうにあってしまってゴメンマッティ・・・ in Finland

夜。私が寝ている間、コテージの屋根を1枚挟んだ先の上空には、壮大なオーロラが輝きまくっていた。・・・ということを、翌朝、宿のご主人から知らされたのですが、聞かなかったほうが良かったかもしれません。眠気に負けた私よ・・・ 見ようよ、空!!探そうよ、オーロラを!!

* *

そんなことがあった日から数ヶ月後の今日です。Finnish Nightmares 2は、『マッティ、旅に出る。やっぱり今日も憂鬱』という日本語タイトルで、発売になりました!

タイトルの通り、今回のマッティは、旅に出ます。

職場やご近所づきあいの「憂鬱」を描いていた前作に比べると、新しい場所で、新しい一面を見せてくれています。前作同様に、「わかるなあ」という共感ありつつ、「マッティ(フィンランド人)は、こういうのが、好きなんだね」というのが伝わってくる。

目立つことが苦手、馴れ馴れしいのが苦手、人を押しのけるのが苦手、人の平穏をジャマすることが苦手。

そんなマッティの憂鬱と、そして、いかにもフィンランド的な日々の過ごし方・・・というのを一緒に体験してもらえるのではないかと思います。

新しいマッティも、どうぞよろしくお願い致します。☕️

<追記>

11/26(日)18:30-東京・谷中のひるねこBOOKSさんでトークイベントがあります。フィンランドとマッティのことが大好きだという店長・小張さんと私で、マッティのこと、フィンランドのこと、いろいろお話しする予定。1席空きが出たそうなので、気になる方、申し込み方法など詳細は、こちらから↓

http://hirunekodou.seesaa.net/article/454469666.html?1511253563

フィンランドで相変わらずの人気者なのだ。(フィンランドの書店にて)

フィンランドで相変わらずの人気者なのだ。(フィンランドの書店にて)